さん、元気にしていますか。

 あなたが僕らとアーガマを降りてからかなり時間を経ていますが、地球では変わりなく過ごしていますか。思えば、皆が月面都市のフォン・ブラウンに留まったのに、あなただけは地球に行くと云って、そうやって行ってしまいましたね。なんだか恨み言を云ってるみたいに聞こえるかもしれないですけど、どうとってくれても構わないです。そんなのじかに会いにくればいいのよと、あなたは云うのでしょうが・・・そうですね、会いに行けばいい。でも、地球に会いに行ったとしてもあなたには会えないんだろうと思いました。おかしいって思うかもしれません。でも本当にそうなるんですよ。それは多分、僕がニュータイプだからかも、しれません。それに地球にはフォウのこととか、色々なことが詰まりすぎてて僕には少し辛い場所です。嫌いじゃないですけど。あなたは前に亡くなった人を忘れようとする事は、その人の存在を二度消してしまうことだと教えてくれましたね。あなたにしてみたら、何気なく云ってくれた一言かもしれない。覚えていないかもしれないけれど、僕は鮮明に覚えています。あぁ、違う。僕はそんなことを云いたいわけじゃなくて・・・。自分の中でまとまりがつくまで少し、僕のことを書こうと思います。僕はまだファと一緒に月面都市にいて、医師免許をとって医者になろうとしています。あの戦争で、沢山の命を奪ってしまった償いというわけじゃないけど、誰かの命に関わる仕事をしたいと思っていたんです。モビルスーツにもある程度は乗れるし、所謂軍人ってやつになってもよかったけど、それはきっと僕じゃないんですよね。アムロさんも何度か僕のところにやってきてくれて、ロンド・ベルに入らないかって誘ってくれましたけど、僕は断ったんです。もう十分戦ったって思いました。あの時は殆どなりゆきで、とりかえしのつかない過ちもしたけれど、最後まで僕は僕でいられたし、逆に感謝しているくらいです。僕は単に運が良かっただけかもしれません。そう、運が良かったんだ。さっき、アムロさんの話が出てきましたが、宇宙に上がってきているんですよ。ブライト艦長にもアムロさんにも会わないから、二人とも凄く忙しくしているみたいです。僕は軍人ではないので詳しい所までは知りませんが、つまり、それは戦争がはじまるということのようです。月面都市のアナハイムの軍事施設では毎日、信じられない量の兵器を作っていました。あの人たちは作ったものが人を殺すってわかってないみたいで、僕は凄く嫌になります。
 そう、僕はこの間そこで気になる話を聞きました。それをなんとなく、あなたに伝えたいと思ったんです。本当かどうかわからないし、大した事でもないと思います。ただ伝えたいんです。何ヶ月か前に、グラナダで、正規部隊からの発注じゃない、真っ赤なモビルスーツが建造されていたそうです。ただそれだけの話です。つまらないことでしょう。でも聞いてください。僕やファが、エゥーゴに入ったばかりの時は年齢的にあなたが一番僕たちと近い歳だからという理由で一緒にいることが多かったかと思います。あなたはアーガマ一のメカニックで―・・・こんなことを書いたらアストナージさんに怒られてしまうかもれないけど、本当のことなので仕方ないです・・・―僕が乗っていたMk-Uの整備やΖの設計とか、それから、本当に色々なことを僕らに与えてくれました。たった二つか三つしか違わないのに、あなたは僕の本当の家族よりも家族らしくて、とても嬉しかったんです。大尉は・・・あの人は、今度こそ全部を終わらせるために地球に何かをするんだと思います。あなたがジオンのコロニー落としで本当の家族を失った事を知っているくせに、なんて酷い人なんだろう。あぁ違う、書きたい事はもっと他にあるのに、うまく書くことができません。ただこれだけは言わせてください。僕はあの時の約束を果たしたいので、あなたに宇宙に上がってきて欲しいと思います。フォン・ブラウン行きのチケットを同封しておきます。



                                         カミーユ・ビダン











水の星へ愛を込めて

( 張り裂けそうな胸の奥で 鼓動だけが確かに生きている )








20080420@原稿完成